自転車競技(ロード/トラック)における低酸素トレーニング

導入

同じ自転車競技でも、数時間の集団走を戦うロードと、数十秒〜数分の高強度を繰り返すトラックでは、求められる能力が異なります。低酸素トレーニングも、この競技特性に応じて狙いを変えるのが合理的です。本記事では、ロードとトラックそれぞれに向けた使い分けを研究知見から整理します。

この競技での狙い

ロード(有酸素基盤)

長時間の有酸素能力が問われるロードでは、赤血球生成を介した酸素運搬能の向上を狙う「Live High-Train Low(LHTL)」が中心的な選択肢です。総ヘモグロビン量の増加が報告されていますが、反応には個人差があるとされています。

トラック/スプリント(反復スプリント能力)

短時間高強度を繰り返す種目では、「低酸素下反復スプリント(RSH=Repeated-Sprint training in Hypoxia)」が研究されています。低酸素下の反復スプリントでは、代償性の血管拡張(NOを介した血流増加)が速筋線維により有利に働くと示唆され、反復スプリント能力(RSA)の指標や疲労耐性の改善が報告されています。トレーニングされた自転車選手を対象とした事例研究では、30秒全力走での疲労の遅延や運動後血中乳酸の低下が報告された例もあります。

プロトコル例

  • ロード(LHTL):常圧低酸素環境で1日12〜14時間以上、標高2,000〜2,500m相当を目安に3〜4週間。
  • RSH:標高3,000m相当(吸入酸素濃度おおむね14〜15%)を目安に、全力スプリント(およそ10〜30秒以内)×6〜8本を2〜4セット、不完全休息(60秒以内)。週2〜3回、数週間の実施が研究で用いられています。
  • 強度管理:低酸素下ではパワーが落ちやすいため、各本の質を落とさない本数設定が重要です。

屋内ローラーでのRSHには「AltEdge トレーニングマスク」、生活曝露には「AltEdge AltitudeX Pro/Lite」が選択肢になります。

注意点

  • RSHは高強度・高負荷であり、疲労が抜けにくい時期の詰め込みは避けるべきとされています。
  • ロードのLHTLでは鉄栄養状態の確認が推奨されています。
  • 効果には個人差があり、レース直前の初導入は避けるのが無難です。

まとめ

ロードは「LHTLで有酸素の土台」、トラック・スプリントは「RSHで反復スプリント能力」と、狙いを分けて設計するのが研究の基本線です。数値は一般的な目安であり、体調に応じて無理なく調整してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療上の助言ではありません。効果には個人差があります。持病のある方や体調に不安のある方は、開始前に医師にご相談ください。トレーニングは体調に応じて無理なく行ってください。

参考文献

  • Faiss R, Girard O, Millet GP.「Repeated-sprint training in hypoxia」(総説)British Journal of Sports Medicine ほか
  • Girard O ほか「Repeated-sprint training in hypoxia: A review with 10 years of perspective」Journal of Sports Sciences
  • Faiss R ほか「Repeated Sprint Training in Hypoxia: Case Report in a Professional Cyclist」Frontiers in Sports and Active Living
  • Chapman RF, Levine BD.「Defining the dose of altitude training」Journal of Applied Physiology

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