競泳・水泳選手のための低酸素トレーニングと呼吸制限(RSH-VHL)
導入
競泳は、呼吸のタイミングが泳法そのものに組み込まれた特殊な持久系競技です。呼吸を制限しながら高強度を出す局面が多く、低酸素・呼吸制限のトレーニングと相性がよいと考えられ、研究が進んでいます。本記事では競泳選手向けに、低酸素活用と自発的呼吸制限(VHL)の考え方を整理します。
この競技での狙い
基盤づくりとしては、陸上競技と同様にLive High-Train Low(LHTL)による酸素運搬能の向上が選択肢になります。一方、水泳特有の手法として注目されるのが「低肺気量での自発的低換気(VHL=Voluntary Hypoventilation at Low lung volume)」を用いたRSH-VHLです。これは高価な低酸素設備を使わず、海面レベルの通常のプールで実施できる点が特徴とされています。反復スプリント時の疲労耐性(スプリント低下率)の改善や、より高い血中乳酸濃度(解糖系の関与の高まり)が報告されています。
VHLのしくみ
VHLでは、機能的残気量まで息を吐いてから息を止め、その状態で短い全力スプリントを行います。研究では動脈血酸素飽和度(SpO2)が88〜91%程度まで低下し、これはおよそ標高3,000m相当の低酸素に匹敵すると報告されています。
メニュー例
- VHLの単位:息を吐いて低肺気量にした状態で全力スプリント(およそ8秒以内)、その後は通常呼吸で回復(30秒以内)。
- 構成:6〜8本を2〜3セット。セット間は十分に回復。
- 補助:陸上での低酸素刺激には「AltEdge トレーニングマスク」、拠点での生活曝露には「AltEdge AltitudeX Pro/Lite」が選択肢になります。
注意点(安全が最優先)
- 水中での過度な息止めは、失神(ブラックアウト)につながる危険があります。長い水没や過換気後の息止めは避け、単独練習は行わないでください。
- VHLは短時間・低肺気量で行う手法であり、限界までの我慢比べとは異なります。監督者・コーチの管理下での実施が推奨されます。
- 水平姿勢の水泳では上体を起こした運動より効果が出にくい可能性も指摘されており、効果には個人差があります。
まとめ
競泳では、LHTLで土台をつくりつつ、プールでのRSH-VHLで反復スプリントの疲労耐性を狙うのが研究の一つの方向性です。ただし水中での呼吸制限は安全管理が最優先であり、数値は一般的な目安として、体調を見ながら無理なく行ってください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療上の助言ではありません。効果には個人差があります。持病のある方や体調に不安のある方は、開始前に医師にご相談ください。トレーニングは体調に応じて無理なく行ってください。
参考文献
- Woorons X ほか「Repeated-Sprint Training in Hypoxia Induced by Voluntary Hypoventilation at Low Lung Volume: A Meta-analysis」Sports Medicine – Open
- Woorons X ほか「Physiological adaptations to repeated sprint training in hypoxia induced by voluntary hypoventilation at low lung volume」European Journal of Applied Physiology
- Millet GP, Girard O.「Hypoxic training」(総説)
- Faiss R, Girard O, Millet GP.(RSHに関する総説群)
